CASE 432 株主代替わり より良い対応は
株式の買取りに着手
令和 5 年 6 月 11 日 沖縄タイムス 経済面掲載
■ 企業名 H社
■ 業 種 運送業
■ 所在地 非公表
■ 資本金 非公表
■ 創 業 非公表
■ 従業員 非公表
【相談】
創業60年を超え、業績も着実に成長してきた。一方、株主構成も創業当時から大きく変わってきたことが事業運営上の課題となっている。会社経営の迅速な意思決定のために、より良い株主対応の方法はあるか相談したい。
【回答】
老舗企業のH社は、創業者で先代の父親から株式を引き継いだK氏が経営している。地域に根差した堅実な経営で成長し、財務健全性も高い。一方で複数の株主の経営に対する考え方に乖離(かいり)が生じるという課題に直面している。
大きな原因は株主の構成が長い期間で変わったことである。設立当初は経営に携わる5人が出資者だったが、会社が歴史を重ね株主も世代交代が進み、子や孫の世代が株式を引き継いだ。その結果、経営に関心を持たない株主が半数近くの株を所有する状況となり、株主間で利害関係が影響し迅速な意思決定ができなくなりつつある。問題となる株主は現場の経営に口出しすることはないが、配当などに関して要求が頻繁にあり、その対応でK氏の負担が大きくなっている。
株主会社制度においては株主それぞれの経営への関心度に違いはある。経営に関わりたい、会社の利益の分配などさまざまな動機で株主(出資者)となっている。小規模な株式会社の場合は同族者や関係の近い人間が株主であることが多く、目的が一致しやすく、会社経営の意思決定がスムーズと言われる。今回のように株主の世代交代で株主の構成員が変わり経営に直接関わりのない株主の割合が増えると、経営の意思決定がスムーズに進まず運営が難しくなることもある。
相談には経営陣や会社が外部の株主から株式を買い取り株主構成を変える方法が有効ではないかと提案した。厳しい経営環境で雇用を守り会社を継続するには迅速な経営の意思決定が必要だ。
株主から株を買い取る場合は買い取り価額の設定がポイントになることが多く、自社株の評価を正確に行い取引額の目安となる金額を把握する必要がある。これは税務上も注意深く進めなければならない。株式買い取りは法律的観点から手続きに注意が必要なため弁護士など専門家の力を借りることも重要である。配当限度額の計算方法や外部株主への提案のポイントについても助言し買い取りを進めることになった。株式買い取りは簡単なことではないが、解決に向け慎重に進めてほしい。
(県よろず支援拠点コーディネーター・
税理士 遠山康英)
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