CASE 430 赤字経営続き資金繰り切迫
原価管理し価格に転嫁

令和 5 年 5 月 28 日 沖縄タイムス 経済面掲載
■ 企業名 N社
■ 業 種 食品製造業
■ 所在地 本島南部
■ 資本金 非公表
■ 創 業 非公表
■ 従業員 21人
【相談】
本島南部で食品の製造会社を経営しているが、赤字のため資金繰り的に厳しい。新型コロナが落ち着けば一定の売り上げ拡大は見込めるものの、当面の運転資金も不足しており、打開策についてアドバイスがほしい。
【回答】
県産の材料を使用した食品製造会社で、売り上げの約7割がOEM生産(発注先ブランドの製造)となっている。相談者は2代目で、5年前に先代の父親から事業承継した。身内や関係者の理解と協力もあり、引き継ぎ自体は比較的スムーズに進んだ。コロナ禍の影響と材料費や燃料費高騰によって思うように利益が確保できず頭を悩ませていた。財務面では(1)3年連続で経常赤字(2)運転資金不足(3)金融機関の借入金返済が困難―などの問題を抱え、資金繰りも切迫していた。
最初に金融機関に対し返済金額の軽減と新規融資の交渉をするよう提案し、その説明資料となる経営改善計画書の策定をサポートしていくことにした。同社の経営状態を見ると粗利益率が極端に低い点が目についた。原価目線がないと発注先の言いなりになり、収益性がおろそかになってしまうケースはよくある。そこで、計画の最重要施策として原価管理体制の構築を掲げ、優先的に取り組むよう助言した。
金融機関に対しては、数値計画と併せて今後の改善点を具体的に説明したところ、希望通りの金融支援を得ることができた。すぐに公認会計士の協力も得て原価計算の仕組みを構築し、製品および取引先別に採算状況を分析した。結果は大口受注先の多くは極端に利益率が低く、中には赤字取引もあることが判明した。
原価管理ができた社長は、その後覚悟を決めて、取引先に対し現状を丁寧に説明し価格交渉を行った。契約を解除されるなど一部からの反発もあったが、社長の粘り強い交渉によって多くは理解を得られた。
その結果、売上高は前年比で減少したものの、3年間続いていた赤字の解消に成功し資金繰りも大幅に改善することができた。商売は原価と利益を把握しておくことは基本中の基本である。原価計算に基づいて価格転嫁を実行しようとすると、取引を断られるなど痛みを伴うこともあるが、改善に向けた強い覚悟が必要である。その分得られるものも大きい。
いまだ改革の道半ばではあるが、結果が目に見えれば社員のモチベーションも上がる。今後も同社の改革を見守りつつ、伴走支援を継続したい。
(県よろず支援拠点コーディネーター・
中小企業診断士・大城剛)
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